<会社・朝>
目が覚めると俺はソファーに横になっていた。外はもう明るい。
心地良い倦怠感が身体を支配している。
伸びをして身体を起こし、少しずつ覚醒していく。
猫 「にゃぁ~・・・にゃぁ~」
どこかで、猫が鳴いている・・・?
中村 「しのぶ!?・・・しのぶ?」
俺は一気に夕べのことを思い出した。
あれは、夢ではない。それは俺の身体と、そして心が知っている。
しのぶは、どこへ行った?
俺の腕の中にいたはずの、しのぶのぬくもりはもうない。
中村 「しのぶー?どこだ?・・・しのぶー?」
エレベーターの扉が開いて人影が見えた。
中村 「しのぶ!?」
警備員「中村さん、おはようございます。」
降りてきたのは警備員だった。
そして、黒い小さな影が素早く俺に近寄ってきて足元にまとわりついた。
中村 「!?・・・しのぶ?」
警備員「私が出社してきたら警備員室の前にいましてね。
浴衣の生地を首輪代わりにしているみたいなので飼い猫でしょうかね~」
俺は、足元の猫を抱きあげた。猫の首には確かに浴衣の生地がまきついている。
昨日、しのぶが着ていた浴衣と同じ柄だ・・・。
中村 「いや、実は俺が夕べ拾ってきたんです。今探していたところで・・なぁしのぶ?」
猫 「にゃぁ~」
警備員「おやおや、もう馴れてますね?本当に猫を飼う気になったのですか?」
中村 「ええ。こんな不規則な生活を続けてると腹が出ちゃうなって思って。はははっ」
警備員「そうですね~。それは良いかもしれない。
じゃぁ逃げられないように、気をつけてくださいね。」
中村 「はい。今日はもうこれで帰ります。ありがとうございました。」
警備員「お疲れ様でした。」
警備員が行ってしまうと俺は、猫の首に巻かれた浴衣の生地をほどいて広げた。
そこには、細いマジックでたった一文書かれていた。
《花火のように、儚くても心に残る熱い夜をありがとう》
中村 「しのぶ・・・」
俺は、猫を抱きしめて泣いた。
Fin
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