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響瑠

Author:響瑠
ここに書かれている日記は
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車窓から見える景色が灰色から緑色に変わっていく。
乾いた喉が少しずつ潤っていくような感覚と、それとは真逆に苦い胃液がこみ上げてくるような複雑な気分で流れる景色を見つめていた。

そういえば、俺がヨネ子と出会ったのも向日葵畑だった。
あれはまだ小学校に上がる前の夏だった。俺の記憶の中では初めての向日葵畑。
家から祖父母の家までは子供の俺が歩いて5分。その間にある畑では、いつもは野菜を作っているので見通しもよく、家から祖父母の家はよく見えた。俺は普段からひとりで家と祖父母の家を行き来していたし、畑でも毎日のように遊んでいた。
しかしその夏は、大人の背丈ほどもある向日葵が咲き誇り、子供の俺からは何も見えなかった。
その日の夕方、俺は親父にこっぴどく叱られて家を飛び出した。もう何で叱られたかさえ覚えていないが。両親もどうせ祖父母のところに行くのだとわかっていたから追いかけることもしない。
俺は泣きながら祖父母の家を目指して歩いていたが、追いかけても来ない両親を少し心配させてやろうと思い、向日葵畑に足を踏み入れた。
ところが自分の背丈の倍以上もある向日葵に囲まれて、方向が全くわからなくなってしまったのだ。
オレンジ色の空はみるみる紫色に変わってゆき、ますます出口が見つからなかった。
心細さにただ泣きじゃくり座り込んでしまった時、微かに猫の鳴き声が聞こえたような気がして、俺は手をついて這ったまま鳴き声の聞こえた方へ向かってみた。少し広く土が見える場所に真っ白なワンピースを着た少女が立っていた。
見たことのない少女だ。

「・・・何・・して・・るの?」

俺は涙を拭きながらおそるおそる声をかけてみた。

「歌の練習をしていたの。」

その少女はにっこりと微笑むと、俺の目線に合わせてしゃがみ込んだ。

「一緒に歌う?」

俺は、ふるふると首を横に振る。

「だけど・・歌、聴きたい。」

そう言うと、少女はうれしそうに頷いて、土の上に座り込んだ。

「私はヨネ子。あなたは?」
「俺、颯太(そうた)。」

可愛い顔してるのに、ヨネ子だなんて、ばあちゃんみたいな名前だなって思ったら、なんだかおかしくて笑ってしまった。
ヨネ子はそんなことを気にする様子もなく、俺が隣に座ると歌い出した。

そう。歌い出したはずなんだけど、どんな歌だったのか俺は全く覚えていない。

気がつくと俺は祖父母の家で寝ていた。
むくりと起き出して、台所で畑に持って行くお茶の用意をしている祖母の元へ駆け寄った。

「ヨネ子は?」
「颯ちゃん、起きたね?ヨネ子って誰?」
「白い・・・」
「あぁあぁ、猫ちゃんね?ヨネ子ちゃん言うの?」
「・・・?」
「縁側におるよ。」

俺が家を飛び出して、暫くしてから母親が祖父母の家に迎えに行くと、颯太は来ていないということで大騒ぎになったらしい。家族総出で俺を探していると、向日葵畑から猫の歌うような鳴き声が聞こえてきたそうだ。その声のするところへ行ってみると、猫を抱えて眠っている俺が見つかったということらしい。

俺が縁側に行くと、真っ白な猫がのびをして振り向いた。俺の顔を見て「にゃぁ」とうれしそうに鳴く。

それからその猫はヨネ子と名付けられ、祖父母の家猫になった。
俺が高校を卒業して東京に出るまで、ずっとそばにいていつも見守ってくれていたヨネ子。
もう15.6歳になるヨネ子は、年齢が名前に追いついた老猫だ。
具合が良くないということは、そういうことだ。
俺はまだ何の覚悟も出来ていない。




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